TEDxTokyo 2012スピーカー・スポットライト:「D」デザイン

TEDは、テクノロジー(Techonology)、エンターテイメント(Entertainment)、デザイン(Design)の頭文字です。これまでは、6月30日開催の TEDxTokyoでステージを湧かせるスピーカー達の中から、テクノロジー と エンターテイメント[add link] に関わる人々をご紹介して来ました。今日は「D」を表すデザインから、幅広い意味で現代のデザインの枠を超え、拡張し続ける3名のスピーカーをご紹介します。
私たちの文化はデザインと共に進化して来ました。よりエキサイティングで美しく、効率的な住環境や世界をデザインを介して実現する、生命の謎に迫る疑問をデザインを介して紐解いてみる、不可能を可能にしてみたいという強い欲求、デザインは一括りには出来ない我々人間の「より良い」方向への進化への欲求が融合して生まれていることをこの3名はパワフルに体現しています。

稲見 昌彦 ロボット工学と拡張現実の達人


稲見昌彦の作品はSF好きな方なら思わず興奮を覚えるものではないでしょうか?慶応大学メディアデザイン研究科の稲見教授は、光学迷彩システムを発明しました。このシステムは2003年のタイム誌の「Coolest Invention of the Year」に選ばれました。更にその後のEcocarプロジェクトでは、運転席から外部全方位360度を透明にし可視化する、光学迷彩を自動車に取り入れました。また、稲見氏と彼のスタッフたちはロボットと遠隔操作で何が可能になるかを追求しています。JST ERATO(戦略的創造科学研究推進事業)の五十嵐デザインプロジェクトの一部である、拡張現実(AR)インターフェースシステムのCRISTALは、部屋の照明や、掃除ロボット、ホームシアターシステムなどの家電機器を、タッチ・アンド・ドラッグといったジェスチャーによってコーヒーテーブル上で操ることを可能にします。そしてCookyは、料理でサポート役を努めてくれるロボットによる調理支援システムです。稲見氏は、2011年慶応賞や文部科学大臣表彰、若手科学者賞を受賞しています。

川村 真司 インタラクティブ・マルチメディア・マスター、クリエイティブ・コミュニケーター


PARTYという名のクリエイティブ・ラボを仲間たちと共に設立した川村真司氏の錬金術は、様々な素材とメディアを巧みに融合させて、ボーダーレスでインタラクティブなマルチメディアコンテンツを生み出してきました。東京に生まれサンフランシスコで育った川村氏は、ボーダーレスを体現しています。博報堂、BBH、180アムステルダム、そしてクリエイティブ・ディレクターを務めたワイデン+ケネディ・ニューヨークを含む世界中の広告代理店で数々の賞を受賞した広告キャンペーンに携わってきました。現在はPARTYのクリエイティブ・ディレクターとして東京とニューヨークを往復する多忙な日々を送っています。雑誌 Creativity の2011年「世界のクリエイティブな50人」や Fast Company の「ビジネス界で最もクリエイティブな100人」にも選ばれています。NY ADC Young Gunsをはじめ、カンヌ国際広告祭やOne Showでの受賞など輝かしい評価も得ています。川村氏はNHK ETVの「テクネ」製作や、ユニコーン、andropといった日本のバンドのミュージックビデオ等も手掛けています。

池上 高志 人工生命研究者、コンセプチュアル・アーティスト


池上高志氏にとって、生命とは創り出せるものなのかも知れません。彼の研究チームでは、コンピューターシミュレーションや化学実験、ロボットなどによって、人工生命を構築することに挑戦しています。東京大学大学院総合文化研究科の教授である池上氏の研究は、芸術と科学の両面にアプローチするものです。例えば、「サウンドブックシェルフ」というコンセプチュアルアート・プロジェクトは、東京のとある書店内で、温度と湿度の変化に反応する自律センサーネットワークが、ユニークなサウンドスケープを作り出すというものでした。現在は、自律性や持続可能性、進化性といった生命指標の研究に多忙な日々を過ごしています。池上氏の業績の一部は、2007年に出版された書籍『動きが生命をつくる』にも掲載されています。彼は国際ジャーナル(Artificial Life, Adaptive Behaviors, BioSystems, Interaction Studiesなど)の編集委員を務めるとともに、2008年にイギリス、ウィンチェスターで行われた人工生命国際会議20周年大会で基調講演を行いました。